「腸内フローラ」というと、メディアで紹介されるようになって認知度が一気に高まったため、聞いたことがあるという人も多いはず。
口の中にも腸の中と同じように、たくさんの細菌が棲みついています。その数はおよそ700菌種、100億個以上ともいわれていて、それらを「口内フローラ」(医学用語では「口腔フローラ」)と呼んでいます。口内フローラはむし歯や歯周病などを引き起こす「悪玉菌」と、悪玉菌を退治して健康を保つように働く「善玉菌」、そして優勢なほうに姿を変える「日和見菌」で構成されています。
健康な人であれば、悪玉菌は1割ほどで保たれています。しかし、体調を崩したり悪い生活習慣が続いたりすると、このバランスが崩れてむし歯や歯周病が発症しやすくなります。
傷口から細菌が血中に侵入し、全身の血管を巡ることを「菌血症」といい、歯科に関連して認められる状態を『歯原性菌血症』と呼びます。
腸内細菌が血中に入ることはまれですが、口内細菌はむし歯や歯肉炎などの炎症部位から血管内に侵入しやすく、歯周病菌などの悪玉菌が血液と一緒に全身を巡ると、以下のような病気のリスクを高めるといわれています。
悪玉菌が血中に侵入して血管壁に炎症が起きると、血管内にプラーク(粥状の脂肪性沈着物)ができて動脈硬化を誘導すると考えられています。
動脈硬化が進行すると、脳梗塞や心筋梗塞などの発症リスクが高まります。
食事によって上昇した血糖値は、すい臓から分泌されるインスリンの働きによって一定の範囲内にコントロールされています。
しかし血中に侵入した歯周病菌はこの働きを阻害する物質を増やし、糖尿病の発症・悪化を促してしまいます。
アルツハイマー型認知症は、脳に異常なたんぱく質(アミロイドβ)がつくられ蓄積されることによって、正常な神経細胞が壊れ脳が委縮するために起こります。近年、歯周病菌の感染によってアミロイドβの産生が促され、認知機能の悪化を招くことが動物実験などによってわかってきました。
さらには、歯周病の進行によって歯を失ってしまうと自分の歯で力強く噛むことができなくなります。「よく噛む」ことは脳への刺激になり、脳細胞の働きを活発にします。歯周病菌はこのふたつのアプローチによって、認知症のリスクを高めてしまうのです。
理想的な口内フローラで体の健康を守るためには、善玉菌を優勢な状態に保つことがカギとなります。
・歯みがきのタイミング:
朝起きたらまず口をすすぎましょう。食後のブラッシング、就寝前は念入りに。・正しい歯みがき法:
歯と歯ぐきの溝(歯周ポケット)、歯と歯の間を念入りに。仕上げはフロスや歯間ブラシがおすすめ。
舌の上にも細菌は棲んでいます。優しくブラッシングを。
・楽しい会話でストレス解消:
口の周りの筋肉をよく動かすことは唾液の分泌を促します。・シュガーレスガムをかむ:
すっぱいものや噛みごたえのあるものも唾液の分泌を促してくれます。
・緑茶うがい:
緑茶は悪玉菌の繁殖を抑える効果のあるカテキンを豊富に含んでいます。日常的に飲んでも効果大です。
(カテキンの成分を効率よく利用できる粉末緑茶がおすすめ!)・悪習慣の改善:
スマホをいじりながらだらだら食事をしていませんか?
食事中は歯の表面が少しずつ溶ける脱灰がおこっています。食事後は再石灰化によって歯の表面が修復されますが、だらだら食事をしていると再石灰化が間に合わず、悪玉菌が増殖しやすい環境になります。定期的に歯科の検診を受けましょう。定期検診では口腔内の細菌数や衛生状態をデータをとって調べたり、専用の機器でクリーニングやメンテナンスを行います。
いつまでも善玉菌が優勢の口内花畑(フローラ)でいられるようにしたいですね。