『食の安全』を考えたとき、皆さんはどんなことをまず思い浮かべますか?
ウイルスや細菌による「食中毒」、「食物アレルギー」、農作物の「残留農薬」や「遺伝子組み換え」でしょうか?
私たちが毎日食卓で口にする、あらゆる食品に使われている「食品添加物」もそうでしょう。ネガティブなイメージで捉えられることも多いですが、いまや食品添加物の力を借りなければ、現在のような食生活を送ることはできません。
今号では『食の安全』を考える上でのひとつ、「食品添加物」についてまとめました。食品添加物の定義や規制は、国によって異なります。
日本は、食品衛生法によってルールが定められ、次の4つに分類されています。(品目数は令和2年6月までに改正のもの)「指定添加物」
…厚生労働大臣が安全性と有効性を確認したもの(466品目)「既存添加物」
…長期間にわたって使われてきた実績があるとして認められているもの(357品目)「天然香料」
…動植物を起源とする香料(約600品目)「一般飲食物添加物」
…通常は食品として扱われるものを添加物として用いるもの(約100品目)食品添加物をその役割によって分類すると・・・
《食品の製造や加工のために必要なもの》
豆腐を固める凝固剤、中華麺を作るときに小麦粉に加えるかんすい《食品の風味や外観を良くするためのもの》
色合いを良くする着色料・発色剤・漂白剤、香りをつける香料、風味を良くする甘味料・調味料、食感を良くする乳化剤・増粘安定剤《食品の保存性を良くし、食中毒のリスクを防止するもの》
食品の保存性を高める保存料・酸化防止剤、細菌の繁殖を抑える殺菌料・防カビ剤《食品の栄養価を補充、強化するもの》
ビタミン、ミネラル、アミノ酸1)食中毒のリスクが高まる
油脂などの酸化や微生物による腐敗など、食品の衛生確保が難しくなります。
また、加工食品の長期保存が不可能になります。2)経済的損失が生じる
生産地から消費地への流通の際、品質を保持するために冷凍・冷蔵技術を取り入れて輸送する必要があり、コストが増大します。
また、腐敗による廃棄で資源のムダが生まれます。3)作れない食品がでてくる
豆腐を固めるためには「にがり」、中華麺を作るには「かんすい」がなければ作れません。健康志向の高まりにより、「天然由来」の食品添加物や「無添加」の食品が人気を呼んでいます。同じ着色料でも、ラベルに「食用赤色○号」と書かれているより、「クチナシ色素」と書いてあるほうが安心しませんか?
前者の科学的に合成された着色料は、消費者の印象があまり良くないため、食品メーカーも天然由来の色素にかえる傾向があるようです。しかし、これら合成系のものも含めて市場に出回る食品添加物はすべて厳しい基準をクリアして、法的に認められたものです。一概に合成より天然由来の食品添加物のほうが安全性が高いとは限りません。
また「無添加」と聞くと、私たちはつい添加物が一切排除されたものだと思ってしまいがちです。
しかし「保存料無添加」という表記がある場合でも、保存料が無添加なのであってその他の食品添加物は使用されているはずです。他にも、保存料としての表示が不要な保存性を高める別の食品添加物を代用している場合もあります。
私たちは「無添加」という言葉の持つ良いイメージに、惑わされてしまっていることも多いのではないでしょうか。国際的には世界保健機関(WHO)と国連食糧農業機関(FAO)の合同会議で添加物の安全性を評価して、各国に情報を提供しています。
日本では内閣府食品安全委員会で行われるリスク評価の結果をもとに、1日摂取許容量(ADI)が設定されています。これは食品添加物などのある物質を、毎日一生涯摂取し続けても有害な作用をもたらさないとされる1日あたりの摂取量です。
食品添加物の安全性に対する考え方は人それぞれです。私たちは正しい知識と理解を深め、それぞれの判断で食品を選びバランスの良い食生活を心がけましょう。
参考:一般社団法人日本食品添加物協会資料 / 公益財団法人 日本食品化学研究振興財団HP / 厚生労働省HP より