今、全国の小中学校や高校など多くの教育機関では、新型コロナウイルスの影響で春休みが延長され、新年度がなかなかスタートできない状況です。
外出できず自宅で過ごすお子さんたちが、『歯』に注目した動物の生態に関心をもってもらえるように、「動物の歯」第二弾として『海の哺乳類』『魚類』をご紹介します。
歯に注目してみると、動物たちのお食事事情がわかってきます。海の哺乳類といえば、大きなクジラを思い浮かべる人が多いのではないでしょうか。
クジラの仲間には歯のある種類とない種類がいます。歯のある種類「ハクジラ」(マッコウクジラ・シャチ・イルカ)は、歯が一度だけ生えて、一生抜けかわらない“一生歯性”です。これは本来の哺乳類の歯の特徴ではありません。
水中で捕食するために適した歯へと進化したのです。他にもクジラの仲間で「イッカク」という動物がいます。頭の先から長い角が一本出ていますが、この角は左側の切歯だけが左巻きにねじれながら長く伸びたもので、じつは歯なのです。
その役割については謎とされてきましたが、最近の研究では高度な感覚器官であること、また仲間とのコミュニケーションツールであるということもわかってきました。
『海獣』のイメージで思い浮かぶのは、太くて長い牙が特徴の「セイウチ」です。セイウチの主食は二枚貝ですが、閉じた貝のすきまから中身だけ吸い出して食べるので、食事のときに牙は使わないのだそうです。
セイウチは“歯で歩くもの”という属名があり、海からはい上がるとき氷に突き刺して体を引っ張りあげたり、氷に呼吸用の穴を開けたりと、まるで手足のように牙を使っています。
また、自分の強さをアピールして縄張りを守るためにも使います。クジラの仲間で歯のない種類の「ヒゲクジラ」(ザトウクジラ・シロナガスクジラ)は、上あごにびっしり並んだひげ板によって、オキアミなどの海中の動物プランクトンをこし取って食べます。
また卵を産む哺乳類(単孔目)、「カモノハシ」や「ハリモグラ」にも歯がありません。
哺乳類の仲間でも、貧歯目(ひんしもく)に属する「アリクイ」も歯がありません。アリクイは長い鼻先をアリ塚に突っ込み、粘着性のある舌でアリをなめとって食べます。魚は種類によって、プランクトン・海藻・小魚・サンゴなど、食べるエサがそれぞれ違います。
そのため、エサの種類に合わせて口の形や歯の形が大きく違っています。プランクトンや小魚など小さいものをエサにしている「イワシ」や「カツオ」などは小さい歯しかありません。
貝類などをエサにする「タチウオ」は牙状の歯、苔や藻を食べる「アユ」はヤスリ状の歯、「金魚」や「コイ」は喉の奥に咽頭歯という歯の役割りをする器官がありますが、歯はありません。
「サメ」は口の中に何列もの歯を持っていて、エサをとるために使われる歯は前から2列目くらいまで、その後ろには予備の歯が何列も並んでいて、前列の歯が割れたり抜け落ちたりすると、ベルトコンベアーのように後ろの歯が前へと出てきます。
同じサメでも、「ジンベエザメ」は小型の甲殻類やプランクトン、また藻などの海藻も食べていることがわかっていて、その食事のしかたは『ろ過摂食』です。
そのため歯は退化しています。大きな体に似合わず、凶暴なサメのイメージがないのは、特徴的な恐ろしい歯がないからなのかもしれませんね。
参考サイト:海遊館HP(現在臨時休館中ですが、「おうちで海遊館」配信中です)
https://www.kaiyukan.com/connect/news/202003_post-390.html
:NATIONAL GEOGRAPHIC 日本版‐海の生き物 他